日本初、水の旅をつづる編鐘によるCD。賀茂川の源流からはるか下流の淀川まで、ゆるやかに、また激しくリズミカルに!源流から河口まで収録した水音と共に、編鐘の響きが水のいのちを奏でる。環境音楽家・長谷川有機子による水の調べ。
曲目「水の源(源流)」
演奏楽器:琴鐘
京都賀茂川の源流「祖父谷」に5月下旬、録音機材を背負って出かけた。風の強い日だったが、岩肌から滴り落ちる水音が透き通るような静けさを誘った。凛と張りつめたような清らかさを、生まれたばかりの水音は持っていた。90歳の鳴り物師、南條一雄の職人としての飽くなき情熱が生み出した琴鐘の澄み切った音が、水の源音の美しさと厳しさに驚くほど一致していた。
「緑したたる(上流)」
演奏楽器:琴鐘、久乗編鐘、ドラ 京都雲ケ畑付近の水音
源流「祖父谷」から谷川は、まさに緑を縫うように流れていく。岩にたゆとう音、岩間を走る音が交差する水の音を追って川を下った。岩にあたる水の音を琴鐘、岩を走りながら広がる流れを久乗編鐘、下流へ下流へと向かう水のエネルギーをドラで奏でた。5月の上流の音は、静かでどこか頼りなげだった。
「命はぐくむ(中流)」
演奏楽器:久乗編鐘、カリンバ2台 京都二条大橋付近の水音
上賀茂から京都の街を縦断し、さらに宇治川などと合流していく流れは、鳥や魚、私達の命をもはぐくんでくれる。川辺で憩う人々、餌を捕る鳥たち。様々な命が共にこの流れに寄り添っている。まるでこの地球の全ての命の輝きのように、水面がきらきらと光っていた。未来へと繋がる水の流れと豊かな命への祈りをこめて、久乗編鐘を奏でた。
「海へ(下流)」
演奏楽器:久乗編鐘、タイの太鼓、シェイカー、ドラ、ジャンベ 大阪酉島新淀川左岸付近の水音
大阪湾が臨める淀川の河口付近は、川幅も広く流れも豊かだったが、水音は川岸に打ち寄せる波音だけだった。24時間操業している工場の音と街の交通騒音が 常に響いていた。騒音を避けて収録するために、再度深夜に訪れた川岸で、街のエネルギーを遥かに超える水底に潜む自然の偉大なエネルギーを私は感じ、感動した。水底に渦巻く大きな流れの激しさを太鼓や編鐘で表現した。変わらぬ豊な自然と水の流れを祈りつつ。
- プロデュース・作曲・演奏:長谷川有機子
- 助演:谷角慶子(ドラ・タイ太鼓他)、池田旭(カリンバ・ジャンベ)
- 編集:富田民人(うずら音楽舎)
- 2003年8月31日発売